前回に引き続き「思考系」シリーズです。前回のエントリはこちら。 dewahisashi.hatenablog.com
前回は考えることとは何か(What)について言及しましたが、それだけ分かっても「考えられる」ようにはなりません。
「考えられるようになる」とは、すなわち方法(How)を体得することが必須です。
しかし、「考える」という行動時代が抽象的な概念であるため、「考える」ということを適切にHow-Toとして表現できているツールに巡り合ったことはありません。
コンサルという職業柄、考えるための方法をいろいろと探してきましたが、なかなか難しいというのが実感です。
例えば以下のようなもの、考えるためのツールとして広く世の中に知られています。
などです。
これらのツールが具体的なツールの名称であるのに対して、もう少し抽象度を上げた表現を使って考える方法を説明することもあります。
- ロジカルシンキング(論理思考)
- ラテラルシンキング(水平思考)
- デザイン思考
- メッセージシンキング
- シナリオシンキング
- 仮設思考
などです。
もっと抽象度を上げていくと「左脳思考」「右脳思考」みたいな感じになります。
これらの考えるためのツールは、あくまでも考えるためのサポートに過ぎない、ということを念頭に置いてもらいたいと思いますが、使いこなせるようになれば強力です。
しかし、どのツールを使いこなすためにも必須となる能力があります。
それが本記事のタイトルにもあるような「思考の見える化」能力です。
(今回、ひらめき力のようなものは、対象から外します。すいません。)
これができるとできないのでは考える質に雲泥の差が出ます。
また、考えた結果を相手に説明する際にもこれができると非常に強力です。
一応補足しますが、後者は非常に重要です。
考えた結果が価値があるかを決めるのは自分ではなく周りの人です。そのため、考えた結果やプロセスを相手に説明ができなければ、価値があるかどうかを相手が考えることすらできません。
まず、なぜ思考の見える化が大切なのか、という点に触れていきます。
これを理解してもらうためには、反対の状況から考えていくと分かりやすいです。
つまり、「考えることが苦手な人は何ができていないのか」ということから考えます。
ただし、この際の前提として、経験を含む情報は十分に持っており、いわゆる通常の思考力は持っている人を想定します。
考えることが苦手な人は、全てを「なんとなく」で考え続けます。
例えば、ある飲食店の売上が低迷している原因を特定しようとする場合、
売上 = 単価 × 顧客数
こういった式で表現されることはおおよその人が理解しており、単価もしくは顧客数のどちらが下落したのかを見極めて、下落の大きな方に真因があると定め、対策を打つ。
そういった感じです。
仮に単価が落ちている場合、
単価 = メイン料理単価 + サイド料理単価
のような形で深堀していき原因を特定していきます。
ここまでに違和感を感じましたでしょうか?
もし何も感じなかったのであれば、「なんとなく」考えているということです。
上記の例で言えば、「単価」とは何を指しているでしょうか?
- その飲食店で販売しているメニューのすべての平均単価
- お客さんが注文してくれたメニューの平均単価
少なくともどちらなのかを意識しておく必要があります。
この場合、無意識で後者を選択しているケースがほとんどだと思いますが、それを適切に言語化しない状態で考え続けると、気づいたら前者になっていた、なんてことが起きます。
議論している最中に考えていたことが変わっていってしまう人は、こういった言語化の「ゆるさ」を残したまま考えている人です。
また、「顧客数」の「顧客」も気をつける必要があります。
飲食店(=レストラン)であれば、お店に入った人=注文・購入してくれた人でしょうが、これが衣料店になった瞬間、お店に入った人≒注文・購入してくれた人になります。
どちらを差すのか明確にしたほうが、思考にブレが出ないため安全です。(この例であれば、「購入者一人あたりの注文平均単価」や「購入者数」といった表現を使ったほうが良いです。)
ここまで例示してきましたが、考えることが苦手な人は「何を考えているのかがはっきりしなくなる」状態が起きます。それを避けるためには、可能な限り「言語化」することが必要です。
言語化といっても難しく考える必要はなく、できるだけ正確に表現することを心掛ければよいです。まずはその意識を持つだけで、考えることに実像が伴います。
また、考えることが苦手な人は、自分の使っている表現の「ゆるさ」に気づきません。
(「ゆるさ」に気づくことができていれば、そもそも「ゆるく」なりにくいです。)
先ほどの「顧客数」を例にとると、
- お店に足を踏み入れた人の数
- お店で商品を購入してくれた人の数
上記の2つを明確に区別できるようになるためには、「顧客」を具体的にイメージしてみる必要があります。
なんとなく「顧客」と言うのではなく、どういったお客さんを「顧客」と呼ぶのか、お客さんの行動をイメージしながら考えると容易になります。
商品を購入するまでには、いくつものステップがあります。
- お店を知る
- お店に入る
- 商品を選ぶ
- 商品を購入する
歩行者としては上記のステップを経ない限りは商品購入にはたどり着きません。(ECの場合は違いますが。)
このステップをイメージできれば、どれを「顧客」とするかを選択するだけです。
1・3を顧客と呼ぶことも可能ではありますが、計測することが困難なため、実質的には選択不可能です。
従って、計測可能な2・4のいずれかを「顧客」と呼ぶことになります。あとは目的に応じて選択するだけです。
このような形で考えると同時に「見える化」していきます。
ここまでの内容をまとめます。
また、自分の考えを見える化するためには、(口頭含む)文字・文章と絵に頼る以外の方法はありません。(脳内を透視する仕組みがあれば別ですが。)
絵を使って自分の考えていることを全て伝えきれるのであれば、絵の能力を最大限向上させることが良いかもしれないです。
しかし、大多数の人にとって絵だけで表現することは困難です。特に抽象的な話になればなるほど絵での表現は難しくなります。また、精緻に表現しようとすると、文章と比較して時間もかかります。(簡単な内容であれば絵に描いてしまったほうが早いこともあります。)
そのため、文章・言語を活用するのが現実的であり、実際世の中はそう動いています。
できるだけ正確に自分の考えていることを表現する力を身に着けることで、思考力も向上していくと考えます。
そのためには、日本語力を身に着ける必要があります。(母国語が日本語であれば)
自分が何を考えていて、それを具体的に表現する能力は、すなわち日本語力です。
極端に言えば、日本語力を向上させることが思考力の向上につながる、と言えます。
思考の見える化の大切さや日本語力の大切さが伝われば何よりです。
ということで、最後に日本語力向上のおすすめ本を紹介して終わります。
↑とりあえず1冊読むなら、読みやすいのでおすすめです。
↑少し難解な内容を表現する力を身に着けたい人におすすめです。
↑ 1文ごとの文章力の品質が上がった人におすすめです。
では。