私の仕事柄、特定の業界に絞られず、様々な業界の会社と接します。
「会社」と言いましたが、必ずしも会社(=私企業)とは限らず、官公庁やそれに近いところの組織ともお付き合いをすることがあります。
また、会社の中にも、製造業・商社・サービス業など、様々な企業形態がありますが、どこかの業界・会社に偏ることなく、これまで経験を積んできました。
意識的にそうしたわけではなく、結果論的なところがあり、特定業界への専門性という意味では弱いですが、経験の幅を持っているという意味では良かったかな、と思います。
各会社とのお付き合い期間は、長いもので数年、短いもので数か月、といった感じですが、どの会社とのお付き合いにも、当然「スタート」があります。
お付き合いのスタートを切るタイミングで、いつも必ずしていることがあります。
その内容が、みなさんの仕事や就職活動の企業分析などで、お役に立つのではないか、と感じたので、本日はその内容を書いていきたいと思います。
もう結論はタイトルに書いてあるのですが、私は常に
何を提供する会社なのか
に注目して、その企業を観察するようにしています。
「何を提供するか」とは、どういうことか。
例えば、製造業であれば「モノ」を提供することが、その会社の提供しているものです。
そのくらい表面的なものであれば、高校生でもわかると思いますが、もう少し踏み込んだところまで、その企業が提供しているものを考えていくと、その企業に対する理解度がぐっと上がります。(我々の世界では「解像度が上がる」なんて言い方もします。)
例えば、その製造業の企業が車を製造・販売している会社だとします。
もちろん提供しているのは「車」です。
少し見方を変えれば「移動手段」を提供している、とも言えます。
もう少し言えば、「移動時間を節約する手段」を提供している、とも言えます。
とはいえ、従来の車では運転中の時間は拘束されています。
今後自動運転技術が進んでいけば、「安全に移動する手段+時間の節約手段」を提供している、とも言えます。
こういった形で、企業を見ていきます。
他にも、商社だった場合(ここでは総合商社ではなく物売り的な商社で考えます)、
商社から商品を仕入れる企業の目線では、「その商社にお願いすればなんでも揃うこと(=手間を減らす)」を提供している、とも言えます。
また、商社に販売する企業の目線では、「貸し倒れリスクがあるお客さんと直接やりとりせず、安心感のある会社と取引できること」を提供している、とも言えます。
ここまで書いてきた「何を提供するか」は、言葉を変えれば「価値」とも言えます。
その企業が提供している価値が何かを把握すると、その企業の見え方は大きく変わります。
例えば、商社をただの物流機能としてみるか、貸し倒れの保険機能としてみるかによって、その会社の将来性の認識も変わってきます。
物流機能としてみた場合には、Amazonのようなサービスにいずれ切り替わってしまうのではないか?と懸念を持つかもしれないですが、そこに保険機能があると分かった瞬間、Amazonへ単純に切り替えるのは難しいと分かるかと思います。
この「何を提供するのか」を『コンサル』業界に着目して考えた内容は以下にあります。
就活生向けのお話
就職活動をしている学生と接すると、よく感じることなのですが、
就活中の学生は『企業のやっている”こと”や”もの”』に着目しすぎていると思います。
企業のやっている表面的な”こと”や”もの”は、時代によって変わっていく可能性は大いにあります。
表面的に見えるところまでしか就活生が把握できないのは、社会経験がない以上仕方ないかもしれないです。
しかし「提供している価値」に着目をすれば、その企業が収益を上げている根幹の理解が深まります。
もちろん、それさえも不変とは言えないのですが、表面的なモノに比べると、変わっていく可能性は低いと思います。
むしろ、企業のコアコンピタンスとして、残り続けることの方が多いと思います。
その「価値」に、「将来性を感じるか」「自分が共感できるか」といったことを大切にして就職活動をするのが良いのではないか、と私は感じます。
最後に
「提供する価値」とは、もう少し表現を変えれば「会社の存在意義」に繋がります。
会社の存在意義を理解すると、その会社のビジネスの方向性・展開方法もクリアに分かっていきます。反対に、やってはいけないこと、まで見えてきます。
コンサル会社は、その企業の方向性を提案することはできますが、決定することはできません。その提案の質を上げるためには、その会社が存在する意義・提供価値を考えることが非常に重要になってくる、というわけです。
解像度を上げて企業活動を見るということ、その観察眼を持つメリットについて、ここまでの内容でで理解してもらえれば、とてもうれしいです。
では。