コンサルタントという職業柄、世の中にある様々な思考方法に触れることが多いです。
その中でも、世の中一般的に広く普及しているのが「ロジカルシンキング」だと思います。
ロジックツリー・ピラミッドストラクチャー・MECEといったワードは、仕事をする中でも聞いたことがある人も多いかと思いますが、「なぜなぜ分析」について今回は考えてみたいと思います。
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析そのものは、トヨタ生産方式の代表格として世の中に広まりました。
何か問題が生じた際に「なぜ?」を繰り返すことによって問題の原因をどんどんと深堀していく手法です。
例えば、以下のようなものです。
「売り上げが伸びない」→なぜ?
→「定番商品の動きが悪い」→なぜ?
→「数年前は売れ筋だったが今は類似品も多いから」→なぜ?
→「目新しくないから」「商品価値が下がったから」→なぜ?
→「他社に負けてしまうから」→なぜ?
→「マイナーチェンジが活かされていないから」「コストパフォーマンスが悪いから」
「なぜ?」と深堀をしていく際には、MECE(漏れなくダブりなく)といった考え方が大切になるのは言わずもがな、なのですが、「なぜ」だけを繰り返していくと誤った方向に進んでしまうケースが存在します。
その注意点を今日はお伝えしたいと思います。
〇:なぜ起きるのか?は課題の原因を深掘る。
「なぜなぜ分析」と呼ばれる方法で正しい問いは「なぜ起きるのか」です。
なぜなぜ分析の本質は「発生した問題の原因を特定する」ことにあります。
そのため、「なぜ?」の先には「問題の原因」が無ければなりません。
そのため、その時に使う問いは
- その問題はなぜ起きたのか?
- なぜ、そうなったのか?
というものでなくてはなりません。なぜなぜ分析で大切なのは「原因」です。
×:なぜ問題なのか?は課題の重要度を測る。
なぜなぜ分析をやると「なぜ?」としか問わないため、「なぜ問題なのか」と考えてしまう人もいます。
しかしこの問いは「課題がなぜ課題として認識されるのか」という課題設定そのものに対する疑問をつぶすための問いです。
例えば、「学力格差」というキーワードで考えてみると、
- なぜ学力格差は起きるのか?
⇒経済的な差によって塾に行ける/行けない差が生まれ学力格差が起きる。(原因) - なぜ学力格差は問題なのか?
⇒学力格差が広がることで、市民間での生活格差の広がりを生むから。(課題の説明)
といった具合で、出てくる解が大きく異なってきます。
このように「なぜ問題なのか?」は課題の重要度(なぜ課題なのか)を測るときには有効ですが、原因の深堀の用途には使うことができません。
×:なぜそう言えるのか?は問題の裏付けをする。
次に、「なぜそう言えるのか?」と問いを立ててしまう例です。
これは問題がなぜ問題だと言い切ることができるのか、を裏付けするときには有効ですが、原因の深堀には向いていません。
上と同じく「学力格差」を例にとってみます。
- なぜ学力格差があると言えるのか。
⇒(同じテストを実施した際に)〇〇区では中学生の正答率が平均60%だが、××区の中学生では正答率が平均50%であるため。
このように問題が生じた背景を探り、その問題がなぜ問題だと言い切れるのか裏付けをすることができますが、原因を深堀することには使えません。
まとめ
なぜなぜ分析の解説を読むと「なぜ?」と自分に問おう!とは書いてありますが、「なぜ」の後ろに続く問こそ一番大切なポイントとなります。
なぜなぜ分析の本質は、発生した問題の原因を特定することにありますので、誤った使い方にならないよう注意していただければと思います。
上記に挙げた二つのパターンも使うタイミング・用途を間違えなければ、もちろん有効な問いですので、ぜひマスターしていただければと思います。
では!