この数日、2冊の本を読んでいました。
どちらの本も今から10年ほど前に、それぞれの本が発刊された当時に読んでおり、非常に感銘を受けたので本棚に残していました。
社会人になる前後で読んでいたのですが、社会人歴10年に差し掛かろうというタイミングだったこともあり、改めて読み直してみようと思いました。
今回はまずそれぞれの本の紹介をしたうえで、私なりに考えたことを最後にまとめます。
もし私の考えたことのみ読みたい人は、以下の目次から飛んでください。
何を読んだのか?
どちらの本も確実に良書なので、一度読んでみる価値はあると思います。
ただし、毛色の違う本なので、その点はご注意ください。
本の紹介
まずはそれぞれの本を簡単に紹介していこうと思います。
「採用基準」 伊賀泰代 ダイヤモンド社
著者は伊賀泰代さんという方で、グローバルな経営コンサルティングファームであるマッキンゼー社で採用マネジャーを勤められた方です。
コンサル業界では知名度No.1の会社で採用を担っていて感じている「就職希望者が誤解している入社条件」と「グローバルに活躍できる人材に求められる要件(=マッキンゼーの採用基準)」とのギャップを軸にして、どのような人材が世の中に求められているのかを言及しています。
特にリーダーシップについて多く言及しています。(むしろリーダーシップの本と言っても過言ではない)
「リーダーシップ」という言葉をどのように捉えるのかは、日本と欧米には大きな乖離があり、日本におけるリーダーシップは「めんどくさいもの」「利得を得るもの」といった誤解も生じていることから、日本ではリーダーシップ教育がなされていない点を指摘しています。
その結果、リーダーシップの無い人材が日本にはあふれており、「グローバル人材※」に求められる要素が欠如した状態に世の中がなっていると述べています。
ここで指す「グローバル人材」は、単なる英語話者という意味ではなく、地頭が良く、リーダーシップも発揮できる英語話者を言います。
リーダーシップが欠如したまま管理職等の”リーダーシップが求められる(っぽい)”職種に就いたとしても、適切な動きをとることができず他国と比較して遅れが出ている。また、逆から見れば管理職のような役割につかない限りは”リーダーシップは求められない”という誤解を生んでいる、と著者は述べています。
リーダーシップは持って生まれた天性のものではなく、マッキンゼーでは育成することで鍛えることができることから「トレーニング可能」なスキルとして考えており、世の中で活躍することのできる人材になるためには、リーダーシップを身に着けることが急務である、と述べています。
書籍の中には具体的な”リーダーシップ”について書かれていますので、興味のある方は読んでみてください。
「デザインが奇跡を起こす」 水谷孝次 PHP研究所
著者は水谷孝次さんという方で、水谷さんの自叙伝のような本です。(もう紙の本は絶版のようです。)
私が就職活動中にお世話になったベンチャー企業の経営者の方から、一度読んでみるとよいと言われ、書籍をいただいたことで知ったのがきっかけです。
水谷さんは戦後まもなくに名古屋で生まれ、デザイン事務所で働かれたます。
時代が今とはかなり異なるため、想像できないところもありますが、かなり激務な状態で働き詰めの生活を送ります。その時に「自分が決めたことをやりきる」ことを徹底しており、事実上司との関係とかは関係なく、良いと思ったこと・必要だと思ったことを徹底して実行していきます。
その後、31歳の時に事務所を独立。様々な経験を積んでいたこと・人脈もできていたこともあり、仕事は多忙ながらも着実に成果を出し続けていました。
(デザインは分からないのですが)様々な賞も受賞しており、大手企業・大手広告代理店とも複数の仕事をやっていたことからも、日本の第一人者と言われるようなレベルにまで達していたのだと思います。
しかし、そのままでは自分が本当にやりたいこと・幼いころから抱いていた世の中に対する思いをぶつけることができない!と考え、仕事の路線を一気に切り替えます。
そこで、出てきたアイディアが”MERRY PROJECT”でした。
「Merry」とは、Happyほど明確に肯定している単語でもなく、ネイティブに聞いてもはっきりと意味をこたえられる単語ではなく、良い意味で抽象的な単語でした。
そこで「あなたにとってMerryとは何ですか?」と問いかけながら、世界各国の人たちとコミュニケーションをとっていく、という取り組みを開始しました。
その結果、日本だけでなく、イギリス・アメリカにも広がり、2005年に開催された愛・地球博や2008年に開催された北京オリンピックにもMERRY PROJECTが関わることになっていきます。
そういった取り組みをどのように推進してきたのかが書かれているのが本書です。
MERRY PROJECTは以下のURLからもどういったものかを知ることができるので、良かったら見てください。とても素敵な取り組みなので、ぜひ!
これからの社会で求められる人材を考える。
AI・人口知能というキーワードが世の中に出回っていることもあり、「これからの社会を生き抜くための人材」といったテーマの議論は様々行われていると思います。
これまでの社会は「問題解決」人材を求めてきたが、これからは「問題発見」人材が必要だ!などです。
そのどれらも間違っているとは思いません。そもそも未来のことなので「間違っている」と明言する根拠がないです。
この2冊を読んだばかりで影響をかなり強く受けていますが、
熱意 × リーダーシップ × 問題解決力
この組み合わせが、これからの社会で求められる能力じゃないないかと思います。
(なんだか稲森和夫さんのやつをパクった感がありますが。。)
「採用基準」を読んでいるときには、リーダーシップ × 問題解決力
「デザインが奇跡を起こす」を読んでいるときには、熱意 × リーダーシップ
を感じました。組み合わせただけなのですが、
熱意 × リーダーシップ × 問題解決力 です。
(数学的には一緒ですが)なぜ最初に熱意が来るか、なのですが
何を為そうとしたときにも「熱意」ほど重要なものはないと感じているからです。
熱量が弱ければ、少しの風で消えてしまいますが、熱量が大きければ多少の風では消えません。
水谷さんがすごいのは、北京オリンピックでMERRY PROJECTで撮影した写真を使ってもらうまでの経緯です。
誰にお願いされたわけでもなく、「これは俺がやらなきゃ誰がやる!!」と強い意志をまず水谷さん自身が勝手に持ちます。その後、北京オリンピックの大会委員会に駆け寄り、断られ、何度も断られ、最後には北京にまで行ってしまって、直談判しても断られ、それでもあきらめず、最終的には採用となる。
ここまでの行動を起こし、成果を出したのは熱量があったからこそだと思います。
(勝手に想いを持つあたりもすごいと思います。)
また、これは同時に自分自身にリーダーシップスキルを使っています。
採用基準で何度となく書かれていたリーダーシップですが、何事も自分事化して、そこに貢献できるように考え、行動していくことは、まさにリーダーシップです。
それをたまたま他人ではなく、まず自分に対して行っています。その後、オリンピック委員会の人たちにも、オリンピックを良くするためには自分の作品を使うべきだ!と持ち掛け、他者を動かしていきます。(しかも、北京オリンピックで動かした相手は、あのチャン・イーモウ)
これはリーダーシップの発揮以外の他にありません。
ある種「問題発見」スキルもこの中には含まれるのかもしれません。
しかし、熱量とリーダーシップがあっても、目の前にある問題を解決していくことができなければ成果は出ていきません。
実際に起こる問題は、政治・人間関係・経済等の様々な要因が複雑に絡んだ結果生じているため、決して簡単に解決していくことができるわけではありません。
水谷さんの場合は、デザイナーとしての実力(=問題解決力)をすでに十分身に着けていたことも、成功の要因にはあったのではないでしょうか。
また、伊賀さんの書籍内では重点を置いて説明されていませんが、「問題解決力」を決して軽視しておらず、「地頭が良い」と表現されている中に含まれています。
何より、熱量×リーダーシップ×問題解決力の3要素は、人工知能には置き換えできません。
もちろん今後の人工知能の進化によっては可能性がゼロではありませんが、
人を動かすのは、やはり人であり、その中心にいつでも立てる状態を作ることが、これからの社会で求められる人材になることではないか、と考えています。
おわりに
正直に言えば、今回この2冊の本を読んでいて、自分は反省ばかり、、、という感じでした。
他者から見たときに、この3要素が自分に身についているかをどう評価されるのかはわかりませんが、自身による評価では「まだまだ」という気持ちが出てきました。
今回、これらの本を読んだのがだいたい10年前くらいだったので、10年後にこの本を読んだときに「そうだよな、俺も当然そうしてる!」と胸を張れるようなレベルになっていたいと感じています。
どなたが読んでも、何らかの気づきがある本ではないかと思うので、読んだことがなければ、ぜひ一度読んでみてほしいな、と思います。
では。